又、胸郭出口を横切る、頚椎に出来た余分な肋骨(頚肋)と、そこかろ伸びる線維帯が圧迫の原因となる事もあります(図2参照)。
頚肋の大きさは様々で、上図の①の部位に硬いしこりを触れると頚肋の可能性が高くなります。診断を確定するにはレントゲンで検査する必要があります。
頚肋は通常、両側性に見られる事が多く、一側だけに見られる場合は、右よりも左に多いと言われています。
胸郭出口症候群は、20~30代の首が長く(首が不安定で頚の周りの筋肉が緊張し易い)、なで肩(肋骨と鎖骨間が狭い)の女性に多く、女性が男性の2~3倍です。
症状が強ければ持続性の疼痛やしびれを示しますが、通常は、上記の3ヵ所の胸郭出口が狭くなる動作でしびれや痛みが現れたり、増悪します。
例えば、髪にドライヤーをあてたり、洗濯物を干したり、つり革につかまる等、上肢を挙上した位置での作業や、重い荷物を持ち歩く、リュックサックや重いカバンを肩にかける等で増悪します。
最近では、スマホやパソコンを同じ姿勢で長時間続けることにより、頚や肩の周りの筋肉の緊張が高まり、発症する人も多いようです。
症状は、動脈、静脈、神経の圧迫される部位により様々です。
手にしびれや痛みを起こす、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、肘部管症候群、筋肉からの関連痛等と鑑別する必要がありますが、これらの疾患が合併する事もあります。
「神経圧迫症状」
知覚神経が圧迫されると、しびれや知覚鈍麻は、斜角筋症候群の場合は上腕や前腕の内側、手の尺側(小指側)、薬指や小指(C8、T1領域)にある事が多く、肋鎖症候群と小胸筋症候群の場合は手全体に症状が現れます。
運動神経が圧迫されると、肘を伸ばす筋肉(上腕三頭筋)、指を細かく動かす筋肉(手内筋)などに筋力低下を訴え、握力が低下し細かい手作業が困難になります。
通常は、知覚障害が運動障害に先立って現れます。
自律神経圧迫症状として、指が白っぽくなる(レイノー現象)、手の熱感、発汗異常も稀に見られるようです。
「動脈圧迫症状」
血行不良による、易疲労感、しびれ、冷感、痛み、感覚障害、手が白っぽくなるなどの症状が見られます。
「静脈圧迫症状」
静脈とリンパ液のもどりが悪くなり、上肢のむくみ、痛み、血管(静脈)が浮き出る、手が青紫色(チアノーゼ)になるなどの症状がみられます。
「筋肉からの関連痛」
緊張して悪くなった、斜角筋(TPによる体幹上部と上肢の痛み・1、図2参照)や小胸筋(TPによる胸部と上肢の痛み・2、図7参照)や、これらの筋肉に関連した筋肉(協力して働く筋肉や、拮抗して働く筋肉)からの関連痛が生じます。
痛みは通常、肩甲骨部、前胸部、肩、腕、手などに鈍い持続する重い痛みが広がります。
患者さんに症状を誘発するような姿勢をとらせて検査します。
胸郭出口症候群では、以下の検査が陽性になります。
上図の斜角筋の①の部分を圧迫すると、圧痛と上肢への放散痛が生じます(モーリーテスト陽性)。
腕のしびれや痛みのある側に顔を向けて、そのまま首を反らせ(前斜角筋が緊張する姿勢)、深呼吸を行なわせると鎖骨下動脈が圧迫され、手首のところの動脈(橈骨動脈)の脈拍が弱くなるか触れなくなり、しびれや痛みが誘発または増悪します(アドソン テスト陽性・図3)。
座位で胸を張らせ、両肩を後下方に引かせると(肋骨と鎖骨の間が狭くなる姿勢)、手首のところの橈骨動脈の脈拍が弱くなるか触れなくなり、しびれや痛みが誘発または増悪する(エデン テスト陽性・図4)。
座位で両肩関節を90度外転、90度外旋、肘を90度屈曲位をとらせると(肋骨と鎖骨間が狭くなり、小胸筋が緊張する姿勢)、手首のところの橈骨動脈の脈が弱くなるか触れなくなり、しびれや痛みが誘発または増悪します(ライト テスト陽性・図5)。
「ルーステスト」
ライトテストの姿勢で、両手の指を3分間屈伸させると、手指のしびれ、前腕のだるさのため持続ができず、途中で腕を降ろしてしまいます(ルース テスト陽性)。
まずは、骨盤、腰椎、胸椎、頚椎をチェックして全体のバランスを取るように矯正します。
*斜角筋への神経支配は頚椎の2番から8番、小胸筋は頚椎8番から胸椎1番です。
頚椎の異常は斜角筋と小胸筋の緊張につながります。
第一肋骨は第1胸椎と関節を作る為、第1胸椎のズレの影響も受けます。
全体のバランスが取れると、神経の流れも正常に戻り、胸郭の周りの緊張が緩みます。
体全体の経絡の調整によっても胸郭の周りの緊張が緩みます。
3つの胸郭出口へのアプローチとしては、斜角筋の緊張により、上方へ引き上げられ可動性が減少した第一肋骨と、小胸筋の緊張により、下方へ引き下げられ、可動性が減少した鎖骨と肩甲骨を矯正し可動性を改善します(斜角筋と小胸筋の緊張により3つの胸郭出口が狭くなります)。
小胸筋、斜角筋、それらに関連する筋肉(拮抗する筋肉と共同して働く筋肉)の反応点への鍼治療や徒手による治療も有効です。
又、小胸筋や斜角筋などへのストレッチも有効です。
やまだカイロプラクティック院・鍼灸院
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